現在はショートボードがメジャーで、プレーニングやジャンプ、スピードを楽しむ事が多いウインドサーフィン。昔は、どんなボードを使用し、どのような楽しみ方をしていたのでしょうか?
「楽しみ方」は「形状」に現れます。ボードの形を見れば、その当時の楽しみ方がわかるのです。
そこで今回は、ウインドサーフィン初期のボード「初代ウインドサーファー艇」に焦点を当てていきます。
「初代ウインドサーファー艇とは?」
「初代ウインドサーファー艇」は、カテゴリーでいうとサーフボードの「グライダー」です。サーフボードのグライダーは、10〜12FTというように長くて重たいのが特徴です。そのグライダーをベースにしたボードにセイルをつけて、バランス良く走れるようにしたのが「初代ウインドサーファー艇」なのです。
初代ウインドサーファー艇の大きな特徴といえば以下のような点が挙げられます。
- 長い(365cm、12FT)
- 重い
- ワイデストポイント(一番幅広いところ)がテイル寄り
- テイルはスカッシュ(幅広く角ばっている)
- ユニバーサル・ジョイントを初めて搭載
ウインドサーファー艇は「水面をすべるようにして走る」ために長くて重い作りになっており、滑らかな乗り味が特徴的。また長さと重さがある分小回りが効かないので、ボードの回転性をあげるためにワイデストポイントがテイル寄りになっています。
角が強く幅が広いスカッシュテイルにすることで、波のパワーを受けやすく安定感が増します。またテイルの幅が広くなるとボードのアウトラインが直線的になり、直進性が良くなります。安定性と直進性が優れていることから、誰でも乗りやすいボードにもなっています。
また、ユニバーサル・ジョイントを初めてのせたボードでもあります。このユニバーサル・ジョイントがあることによって360度回転可能でセイルが自由自在に動かせるので、推進力や進行方向をコントロールできます。
「初代ウインドサーファー艇」は、プレーニングやジャンプができるシャープで軽い作りというよりも、風の力で滑るようにライディングすることを優先した安定性のある作りだったのです。
このように形や作りの特徴を見ていくと、現在主流となっているショートボードやウェイブボードとは多くの点で異なります。ではそんな初代ウインドサーファー艇を使って、人々はどのようにウインドを楽しんでいたのでしょうか?
「初代ウインドサーファー艇の楽しみ方は?」
「初代ウインドサーファー艇」は、グライド*を風の力によって楽しむために作られたのだと考えられています。
そもそも「グライド」とはなんなのでしょうか?明確な言葉では表現しにくいのですが、ボードの質量で海面をスルスルと滑るように走ることです。ボードは長く、細く、重い方がグライドを感じやすいものです。
このグライド感を味わえる「初代ウインドサーファー艇」は、海面に合わせて舐めるように走らせて楽しむととても気持ちがいいボードです。また誰でも乗りやすく、不特定多数の人が楽しめるオールラウンド・プレイなところも魅力でした。そのためこの頃のウインドはファミリースポーツとしても嗜まれていたのです。
「初代ウインドサーファー艇」が誕生したことで、ウインドサーフィン時代初期は風によって海面を滑るように走る楽しみ方が主流となり、風の感覚やその気持ちよさを人々に伝えるウインド歴史の根源となりました。
今やプレーニング、ウェイブ、ジャンプができるショートボードに集中する人が多いため、スピード性・俊敏性に劣るロングボードはあまり見かけないかもしれません。しかし、初代ウインドサーファー艇を始めとするロングボードは、微風でも走り、初心者でも乗りやすく、何よりグライドすることで風で走る感覚をダイレクトに体感できる必要不可欠なボードだったのです。